173コラム生活習慣病
血糖が高いことってそんなにまずいの?(合併症)
糖尿病に至らない状態でも、血糖は上がっている状態があります。これを、境界型糖尿病といい、耐糖能障害(IGT)と空腹時血糖障害(IFG)があります。食事の後に血糖値が上がってしまう耐糖能障害(75g経口負荷試験2時間値140mg/㎗以上200mg/㎗未満)と絶食状態(朝起きたての時)の空腹時血糖障害(空腹時血糖110mg/㎗以上126mg/㎗未満)で、いずれも、正常の血糖値の方に比べると心血管障害などの要因で死亡率が高くなっております。つまりこの状態から、生活習慣の是正が必要です。余談ですが、血糖が上がり始めてから糖尿病に至るまでは、多少の時間の猶予があるようです。境界型から糖尿病になってしまうまでに実も9年かかるようですので、その前に何とかしましょう!!健康診断や人間ドックでこの時期に引っかかるには理由があるのです!!
糖尿病の症状はあまりあてになりません。高血糖がひどくなると、尿中に回収できなくなったブドウ糖とともに大事な水分が尿に漏れ出てしまいます。尿量が増えて、脱水になるので、「口が乾くので、たくさん飲む。たくさん飲むからトイレが近くなる。」この“口喝・多飲・多尿”がよくみられます。そのほか、体がかゆい、できものができやすい、傷が治りにくい、足がつる、だるい、疲れやすい、物覚えが悪い、集中できない、眠い、お腹がすく、食べてもやせる、風邪をひきやすい、感染症が治りにくい、といった症状が現れてきます。さらに、血糖値がきわめて高い状態では、昏睡に陥ることがあります。(ケトアシドーシス性昏睡、高浸透圧非ケトン性昏睡)
血糖値が高いままの状態が続くと、血管がもろく、ボロボロになってしまいます。血管は、全身にはりめぐらされた輸送路なので、血糖の高い状態が続くことで、この輸送路がボロボロになることで、全身の臓器にさまざまな障害が起きます。これを、糖尿病の慢性合併症と呼びます。糖尿病の慢性合併症には、大きく分けると細い血管にみられる合併症(細小血管症)と、太い血管にみられる合併症(大血管症)の2つがあります。細小血管症とは、目の網膜(カメラでいうCMOSセンサー)や腎臓の血液中のゴミを濾過している血管(糸球体)・神経に栄養している血管がおかされる病気です。これを三大合併症と呼んでいます。
糖尿病神経症
初期は脳から遠いところから(長い神経)ほど、症状が出やすくなります。徐々に全身の神経の働きが鈍り、さまざまな症状が現れます。主な症状は、足先や手先がしびれる、感覚が鈍くなる、じんじん痛い、足が冷たい・ほてる、力がぬける、勃起障害(ED)、便秘・下痢になりやすい、起立性低血圧(たちくらみ)がするなどです。
糖尿病網膜症
糖尿病による網膜症は成人後の失明の主要原因の一つです。症状は、視力が落ちる、物がゆがんで見える、目の前にひもや点が見える、視野が欠けるなどですが、高度の視覚障害に至る直前まで症状がないことも少なくありません。
糖尿病腎症
腎臓の働きが低下してくると、だるい、疲れる、足がむくむ、貧血になる、吐き気がする、息苦しいなどの症状が現れますが、これらの症状が現れたときには腎機能はかなり低下していて、人工透析を受けないと生命を維持できない状態も近いといえます。その症状は突然尿毒症という形で現れることがあります。年間1万人以上が人工透析になります。現在、糖尿病による腎不全が人工透析の導入の原因の第一位を占めています。
大血管症は、動脈硬化による脳梗塞、狭心症・心筋梗塞、末梢動脈疾患、下肢の壊疽などがあります。いずれも長いリハビリが必要になり、後遺症で苦しんでいる方々は多いです。
さらに、慢性合併症のほかに、極度のインスリン作用不足によって急激に起こる急性合併症もあります。
また最近の知見では、糖尿病胃腸障害という概念もあり、主に胃の機能障害によっていつまでも胃の中が空っぽにならないことが原因で、症状としては嘔気、嘔吐、早期腹満感、腹部膨満感、上腹部痛などがあります。糖尿病と骨粗鬆症の関係も注目されております。糖尿病の方は、そうでない方と比べて骨折の危険が大きいと言われています。実に骨折のしやすさが3倍にもなるようです。米国国民健康栄養調査から糖尿病前症該当者は骨密度が比較的高い可能性があるものの、骨折リスクは高い傾向が認めらました。
糖尿病は認知症の原因にもなります。糖尿病の方はそうでない方と比べると、アルツハイマー型認知症に約1.5倍なりやすく、脳血管性認知症に約2.5倍なりやすいと報告されています。それだけではありません、歯周病にもなりやすいことがわかっております。また、歯周病が糖尿病や心疾患の悪化要因にもなります。糖尿病の治療がうまくいかない時は、歯周病の治療も並行して行う必要があります。